スペシャルティコーヒーとはタイトル

スペシャルティコーヒーとは

 

ピコで取り扱うスペシャルティコーヒーのことをお伝えする前に、まずはスペシャルティコーヒーの基本をおさらいしたいと思います。

 

スペシャルティコーヒーという言葉は現代のコーヒー愛好家の方々で知らない方がいないくらい浸透した単語になっています。スペシャルティコーヒーという言葉を最初に使用したのは1978年にアメリカのクヌッセン女史が国際会議で使用したものだといわれています。ここでは、スペシャルティコーヒーの概要・歴史をまとめてみました。

1.スペシャルティコーヒーが登場する以前のコーヒーについて

スペシャルティコーヒーが登場してきた背景には、1960~1970年代のアメリカを中心とした、大量生産・大量消費の時代が関係しています。

その当時のアメリカは、冷戦時代。ソ連の脅威のある時代です。
アメリカに近い中南米諸国の国々が社会主義国となることを阻止すべく、アメリカは中南米諸国のコーヒーを共産化防止策として大量に買い付けていました。
コーヒーという中南米諸国の国々にとって外貨獲得のための重要な商品=収入をコントロールし、冷戦という世界の中でアメリカという国を優位にたたせるためだったと思われます。

アメリカが中南米諸国のコーヒーの最大の購入国という立場になったことから、コーヒーの現場では、書いたたき、という現象がおこりました。こうして、コーヒーの買いたたきから、質より量が優先されるようになり、その後のコーヒーの品質の低下を招くことになってしまいました。

その品質の低下したコーヒーを、アメリカは大量にかいつけ消費します。
これが、アメリカの国内のコーヒーの品質の低下を招いた原因です。
そうしてコーヒーの品質が低下することによって、アメリカ人のコーヒー離れが進んでいったとも言われています。

品質の低下したコーヒーを販売していたコーヒー業界は、消費者のコーヒー離れから、経営状態も悪化してきます。
大手のコーヒー業者の中には、金融機関に買収され経営者も変わり、さらなる利益追求のためにこうした品質の低下したコーヒーをスーパー等の量販店で販売も行います。
またそういった量販店で売られていた品質の低下したコーヒーなどが、アメリカ軍の戦地での配給品となるなど、アメリカ人にっとっては嫌な思い出と重なり、アメリカ人のコーヒー離れにつながったともいわれています。

こうした消費者のコーヒー離れ、コーヒー消費量の低下を食い止めるために、品質を向上させる動きが起こり、スペシャルティコーヒーという概念が誕生していったといわれています。

【注釈】
スペシャルティコーヒーの概念が生まれる前までは下記のような評価基準によりコーヒーは選別されていました。
・欠点豆の有無をチェックする等ネガティブな評価基準
・『味』や『香り』等の本来の品質では評価しない
・本来の品質は関係が無い為、特別な環境や特別な技術は考慮されず、大きさや欠点等の見た目等で評価された。
・価格が商品の判断基準

 

2.スペシャルティコーヒーの発祥

1978年、米国のエルナ・クヌッセン女史がフランスのコーヒー国際議会において、“特別な地理的環境が生み出す微小気候がもたらす、特徴的な風味特性を持った新しいカテゴリーのコーヒー”に対して“スペシャルティーコーヒー”という名称を用いてその存在を提唱したことで“スペシャルティーコーヒー”という呼び名が生まれました。

このスペシャルティコーヒーという言葉の出現は、その後のおいしさの基準の評価方法にも変化を与えることになります。

上記に述べた通り、1960年代~1980年代のアメリカのコーヒー産業は薄利多売、大量生産・大量消費が業界の主流でした。

コーヒーの美味しさや素晴らしさというものは個人の好みの問題であって、客観的な評価は出来ないと考えられていました。
そのため品質の評価も『不快な味や臭い』に着目するものとなっていました。
欠点豆の有無をチェックするというネガティブ評価基準です。

欠点豆の有無のチェックとは、腐敗臭、発酵臭、薬品臭、泥臭、カビ臭等の有無が基準となる欠点のチェックのことです。この方法は“価格競争を基本とするコマーシャルコーヒー産業”では現在でも使用されています。

「 おいしさ」という観点での評価は一切行われていませんでした。

こうした中、1975年にブラジルで大霜害が発生し、コーヒー豆の国際相場が1ポンドあたり335セントという史上最高値となった事の影響からか、アメリカでのコーヒーの消費が激減してしまいました。

大量消費を目的としたコマーシャルコーヒーの高騰が、『美味しくないのに高いコーヒー』となってしまい、若者のコーヒー離れを生んでしまった事は否めない状況でした。

 

そこでコーヒー産業の一部が、「薄利多売の価格競争を目的としたコーヒー」から、「消費者に期待してもらえる品質のコーヒー」=“スペシャルティコーヒー”の提供に踏み切る事になります。

しかし、当時のスペシャルティコーヒーは現在のものとは違い、エスプレッソ系ドリンクや、生産国・生産地域を冠としたもの、オーガニックコーヒー、フレーバーコーヒー等のコーヒーが、スペシャルティと呼ばれるものでした。
しかしながらこのようなコーヒーでは少しだけ変わったという印象のみで、品質で着目させる事は出来ず、消費者の要望には及ばないコーヒーでしかありませんでした。

そこで『品質の明確化』、コーヒーの美味しさ、風味の素晴らしさ等を客観的に評価する“コーヒーのカッピング”による評価が1990年代に登場することになりました。

この評価方式が業界内に普及するにつれ、スペシャルティコーヒーは「際立つ風味特性」「際立つ美味しさ」との認識が生まれるようになり、価格競争が目的ではなく、美味しいコーヒー、素晴らしいコーヒーを、客観的、具体的な方法で明示され、そのようなコーヒーを消費者自身が判断できるようになりました。この事象が消費者から評価され、“スペシャルティコーヒー”は新しい産業として頭角をあらわす事になったのです。

日本でもこの潮流はあり、現在のスペシャルティコーヒーはおよそ5~6%のシェアがあるといわれています。また、中小マイクロロースターが高品質のコーヒーを求めカッピングという製品評価を行い、より客観的かつ具体的なコーヒーを消費者の皆様に提供をする事により、コーヒー市場の中で消費者に評価して頂けるよう努力をしています。

【注釈】
〈カッピング評価方式〉
現在日本の市場では『SCAA方式』と『COE方式』での評価が主流となっております。
それぞれ評価方法の特徴はありますが、共にクオリティを具体的に評価する事を目的としている事に変わりはなく、どちらの評価方法を使用するかはコーヒーに従事する方が決めた方が良いとと思います。

3.スペシャルティコーヒーの歴史年表

スペシャルティコーヒーという名前は、アレンジコーヒー等で使用されていたこともありますが、ここでは素晴らしい品質のコーヒーである『スペシャルティコーヒー』に関する主な経緯を年表にしてみます。

1969年 グアテマラ全国コーヒー協会(Anacafe)設立
1978年 エルナ・クヌッセン女史が講演でスペシャルティコーヒーという名称を使用
1982年 アメリカスペシャルティコーヒー協会設立
1991年 ブラジルスペシャルティコーヒー協会設立
1994年 コスタリカスペシャルティコーヒー協会設立
1995年 国連グルメコーヒープロジェクト(ICO)スタート
1998年 パナマスペシャルティコーヒー協会設立
1999年 ブラジルカップオブエクセレンスオークションスタート
1999年 第一次日本スペシャルティコーヒー協会設立
2000年 東アフリカファインコーヒー協会(EAFCA)設立
2001年 グアテマラ、パナマ、ブラジル等でインターネットオークションスタート
2002年 コスタリカ、ニカラグア、等でもインターネットオークションスタート
2003年 現日本スペシャルティコーヒー協会設立

 

2003年以降はスペシャルティコーヒーの潮流が動き、カップオブエクセレンスのみでなく、生産国での協会の設立、生産国独自のオークション、農園独自のオークション等が開催されたり、産地で新しい協会が設立されています。

また、数年前まではマイクロロースターという極小規模ロースターは、生豆の年間使用量が限られたものであった為、スペシャルティコーヒークラスのコーヒーを直接仕入れる事(ダイレクトトレード)が難しい状況でした。しかし、現在は『マイクロロット』と言われる5~50bag位の特別なコーヒーを生産者から提供されることもできるようになりました。ただ、このようなコーヒーは大変特別なもののため、農園主との信頼関係等、私的な付き合いが築かれていないと簡単に手に入れられるものではありません。

スペシャルティコーヒーの定義

2017年5月現在、スペシャルティコーヒーを標榜する際の決まりというモノは存在しておりません。品質がチェックされ、素晴らしい風味特性等を含んだコーヒーであれば、『スペシャルティコーヒー』と言っても罰せられることはありません。また、風味特性が無かった場合でも『シペシャルティ』と言っても罰せられることはありません。これは取扱者の良心による表記です。この部分に今後メスが入る可能性はないとは言えませんが、そのようなアバウトな判断基準であった為、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)は下記のような評価がスペシャルティコーヒーの評価と定義して、その評価の基準を一定にできるようにする参考となるようにしています。

消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。

風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続するコーヒー感が甘さの感覚で消えていくこと。

カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階に於いて一貫した体制・工程で品質管理が徹底している事が必須である。(From Seed to Cup)

具体的には、生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。
そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。
さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。

日本スペシャルティコーヒー協会は、生産国から消費国にいたるコーヒー産業全体の永続的発展に寄与するものとし、スペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティとトレイサビリティの観念は重要なものと考える。


【補足】

  1. スペシャルティコーヒーと一般のコーヒーは、SCAJのカップ評価基準に基づき、コーヒーの液体の風味(カップ・クオリティ)により判別・区分する。カップ評価基準はスペシャルティコーヒーの発展・変化に伴い随時修正する。
  2. 生豆についてのSCAJ独自の厳密な評価基準も必要と考えるが、現時点では各生産国の規格に合致していることを条件とし、欠点豆についてはSCAAの基準を参考とする。今後の検討課題とし、必要に応じ適宜修正をする。
  3. 日本人がおいしいと感じるコーヒーの風味特性を研究課題とする。

「スペシャルティコーヒーのカップ・クォリティを判定する為にはスペシャルティコーヒーに適用可能な判定の尺度を使うことが必要である」

この尺度は、一般コーヒー(メインストリーム・コーヒー)の判定に適用される欠点チェックを対象とする尺度とは全く異なる。
判定・評価の概要を下記すると

1. カップ・クォリティのきれいさ

これはコーヒーの品質の基本的スタートポイントとなるもの。カップのきれいさとは「汚れ」又は「風味の欠点・瑕疵」が全く無い事。コーヒーの栽培地特性「Terroir」がはっきりと表現されるために必須な透明性があること。風味の「汚れ」「欠点」があると、Terroir による風味のプロフィールが隠され、飲む人が感知できにくくなる。

2. 甘さ

コーヒーのチェリーが収穫された時点で、熟度が良く、且つ熟度がどれほど均一であったかに直接関係する甘さの感覚。甘さとは、焙煎されたコーヒーに含まれる糖分の量が絶対的なものではなく、甘さの印象度を創造する他の成分・要素との結合にも依存する。又、糖分が高くても、甘さを感じることを阻害する要因―辛さのある苦味、刺激的な酸味、強い汚れ、渋み等が有ると甘さを感じにくくなる。

3. 酸味の特徴評価

コーヒーが如何に明るさを持つか。明るい爽やかな、あるいは繊細な酸味がどれ程であるかが評価対象。良質の酸味は、コーヒーに生き生きとした印象度を与え、繊細さ、しっかりとしたバックボーンを与えるもの。
酸度の強さではなく、酸の質について評価をする。
反対に、刺激的な酸味、不快な印象度を与える酸味、爽やかさ・キレの無い酸味、劣化した嫌な酸味は、スペシャルティコーヒーには有ってはならない。

4. 口に含んだ質感

コーヒーにより伝えられる触覚。口に含んだ質感には、粘り気、密度、濃さ、重さ、舌触りの滑らかさ、収斂性感触などの感覚・触覚が含まれる。口に含んだ時の量感は、質感とは同じではない。量感に気をとられ過ぎると不快なザラツキによる触覚をコクと誤って判断する結果となる。質感の品質を評価せねばならない。

5. 風味特性・風味のプロフィール

スペシャルティコーヒーと一般のコーヒーを区別する最も重要な項目。
味覚と嗅覚の組み合わせ。栽培―収穫―回収―選別―生産処理―保管―焙煎―抽出が理想的に行われれば、栽培地域の特性―Terroir ―が正しく表現されるもの。
コーヒーが一般的なプロフィールしか持っていないのか、あるいは栽培地の地域特性―Terroir が純正に表現できているかを明確に評価する。

6. 後味の印象度

コーヒーを飲み込んだ後で持続する風味は、コーヒーの他の属性により醸し出される心地よさを強める場合、弱める場合、あるいは一切駄目にしてしまう場合とがある。
コーヒーを飲み込んだ後の「口に残るコーヒー感」が、甘さの感覚で消えて行くのか、あるいは、刺激的な嫌な感覚がにじみ出てくるのかを判定する。

7. バランス

コーヒーは風味の調和が取れているのか? 何か突出するものは無いか? 何か欠けているものは無いか?

【情報提供:一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会】

 

これらの内容を専用のカッピングシートを用いて評価します。
上記の内容に賛同し、評価の基準としているコーヒー関係者は、カッピング評価の点数が80点を超えたものを『スペシャルティコーヒー』と呼びます。

ページトップへ